フーリエ変換赤外分光光度計 (FTIR:Fourier transform infrared spectrophotometer)

 物質に赤外線を照射すると、ある波長の光が選択的に吸収を受けます。
物質を透過した赤外線の強さを縦軸に、波数を横軸にとって記録すると赤外線吸収スペクトルが得られます。
 この赤外線吸収スペクトルは人間の指紋と同じように、その物質固有のものですから、
その物質が何であるかを知るために非常に有効に利用することができます。また、物質を構成している各部の
部分構造に関する赤外線吸収は、どの波数領域で起きるかがあらかじめ知らされているので、
赤外線吸収スペクトルから未知物質の化学構造を知る上での情報を得ることができます。
 吸光度と試料の間には、ランバート・ベールの法則が適用されるので、濃度既知の標準試料によって
作成した検量線を用いて定量分析を行うことができます。

原理および構成

 光源から出た光は、M3によって平行光束となりマイケルソン干渉計に入ります。
この光束は、ビームスピリッタ(BS)により半分は透過して固定鏡M6に向かい、
半分は反射されて移動鏡M7にゆき、それぞれ反射され、合成された後、試料を経て検知器D1に集光されます。
BSとM6、M7までの距離にδ/2の差があると、M6で反射された光波との間にδの光路差を生じ、
そのため合成波は打ち消し合ったり、強め合ったりします。こうして検知器からの出力は、
δの関数となり、これが干渉曲線を与えます。
 この信号をフーリエ変換することにより、赤外線スペクトルを得ることができます。
レーザからの光束は、補助干渉計(D2)に導かれ、レーザ光による干渉縞から移動鏡の位置の検出を行う一方、
M2の中心孔を通して赤外光束の光路をモニタしています。

特 徴

 FTIRは、全波長の同時測定が可能であり、しかもスリットが不要で光を有効に利用できるため、
明るさ、感度、走査速度などの点で非常にすぐれています。感度や明るさを生かした微小物質の検出、
表面劣化状態や微量不純物の検出が可能です。
 測定されたスペクトルはコンピュータ解析にかけることができ、蓄積された多数のスペクトルデータと
未知試料とを比較照合する検索および部分構造の推定を行う方法があります。

FTIRの主な応用例

化学工業

●高分子材料

10μm程度の有機微小異物分析(フィッシュアイ等)、可塑剤・安定剤等の定性、ゴム表面のブリード物やよごれ解析、接着剤、製造工程での品質管理など

●化粧品

トリートメントによる毛髪表面の変化の解析、香料分析など

●製紙

感熱紙の表面解析、表面処理による構造変化分析、インキの成分分析、使い捨てオムツの材料解析、微小異物分析など

●薬品

薬物の分子構造解析、製造薬品の品質管理など

●その他

製品中の異物(塗片、パッキン、木材、繊維、ガラスなど)の定性など

半導体・電気

●Si半導体材料

Siウェハ中の不純物元素定量(O,C,P,B等)、Si基板のCVD膜中のSiH,NHの定量、アモルファスSi中のSiH定量など

●GaAs材料

GaAs材料中の不純物元素(C,Si)の定量分析など

●ディスク材料

ディスク表面の異物分析、磁気ヘッドの付着物分析など

●光ファイバ材料

被覆材料の組成分析など

●液晶材料

液晶の分子構造と分子配向の測定など

●電機部品

電気接点の不良解析、磁気テープ分析、絶縁油の分析、回路ボード上の不良分析など

鉄鋼・機械

●鉄鋼

鉄板上のコート皮膜の分析、石炭の構造分析、鋼鉄上の残留油分の定量分析など

●コピー機

トナー成分分析、ドラム表面の異物および不良解析など

●ペイント

表面劣化測定、不良個所(はじき)の原因分析、塗膜の硬化過程追跡など

その他

●ガス分析

半導体製造工程に使うガスの不純物の定量分析、公害ガス(NOx等)分析など

●地質

岩石の構成成分分析など

●医学

タンパク質の分子構造解析、人工臓器材料解析など

●ガラス

グラスファイバの表面コーティング材分析、ガラス表面のよごれ分析など

●食品

包装用積層高分子材料の分析など